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社長メッセージ

人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ

ALL I Really Need to Know I Learmed in Kindergarden
アメリカの作家、ロバート・フルガムのエッセイ集の題名である。実を言うと中身を読んだことはないのだが、
タイトルの邦訳が印象的で、深く記憶に残っている。
その言い回しを拝借すれば、私の場合、「人生に必要な知恵は映画の上映会で学んだ」ということになる。
大学卒業後、本職の傍ら、映画の自主上映活動を始めた。
もちろん生活の糧ではなく、趣味としてではあったが、それが私の、社会人生活のスタートであったように思う。

 

当時は単館ロードショウのブームがあり、アメリカならいわゆるハリウッド映画ではない、
独立系の資本で作られる作品、ヨーロッパでも映画作家の娯楽として楽しむには難解な作品、
まだ名もない作家の実験的な作品などが公開されていた。
それらは、ふつうの人を気楽に楽しませることは難しいかもしれないが、好奇心の旺盛な、
目の肥えた観客がたくさん居る、人口の多い大都市なら人が集まってくるような、個性的な作品群だった。
私はそんな作品の中から選んだ一本を地元の映画館を借りて、
一夜限りの上映会を行う、という趣味のグループを会員制で運営していた。
当時から「よほど映画が好きなんですね」と言われたものだが、会員として参加してくれていた方々のほうが、
私よりよっぽど多くの映画を観ていたと思う。
そりゃそうだ、「映画が好きなだけ」であれば、自分が観られればOKだ。

上映会を運営していると、配給会社や映画館との交渉に始まり、
会員以外にも一般のお客さんを集めるための宣伝の手配、会員に送る会報を作り、
チラシを何百枚も折って封筒に入れて送ったり、映画を見る以外の作業が発生する。
当然、当日は受付や案内をしているので自分が映画を満足に見ることはできない。
映画を見るのが好きなのなら、映画を上映している暇があったら、自分が大都市に足を運んだほうが、
よほどたくさんの映画を観ることが出来ただろう。

私はなぜ、そんな手間のかかることをしていたんだろう?

今振り返ってみると、私の目的は「好きな映画が観たい」というのではなく、
「自分の好きな映画が観られる映画館が、自分の街にある生活環境」を実現したかったのだなぁと思う。
仕事帰りに、映画館にふらっと立ち寄る。
当時はテレビのサイズも限られていたので、映画館で大画面を観るということは、今よりも十分に喜びであり、
非日常的な空間ではあったが、デートや家族サービスなどの「ハレ」のイベントの場としてではなく、
自身の普段の生活の一部に「ちょっと気の利いた作品をかける映画館」を存在させたかったのだ。
私が映画の上映会を続けていたのは、
ただ単に「映画館の大きい画面で好きな作品を観たい」という映画そのものへの欲求ではなくて、
「自分の生活環境を豊かにしたい」というもっと根底からくる大きな欲求であったように思う。

 

初めにも書いたが、映画の上映会は趣味なので利益が出るはずもなく、本業は別にあった。
大学を出てから結構長く、15年ぐらい勤めたのだが、10年前に「住宅建設会社」に転職した。
その結果、本業と映画の上映会との両立が時間的に困難となり、
「シネフィル香川」という「私の砂場」は、2001年に幕を閉じた。

 

仕事と趣味を、べつべつにやって来た私としては、
家造りに従事した10年は「好きなことを仕事にする」の初体験であった。
個人的な理由で、会社を辞することとなったが、ものづくりの楽しさを、たくさん教えてもらった。
また、一人では決してなし得ない、という意味で、「家づくり」は「映画の上映会」に似ていた。
個人の仕事ではなく、他者と共同で造りあげていく、というところが、非常に私好みであった。

さて、「映画の上映会」と「家づくり」という経験を経て、
今の私は、「人が集まる場所」を造ってみたいと思うようになった。
想いはいろいろとあるのだが、すごく簡単にまとめてしまうと、人はばらばらに離れて暮らすより、
ある程度みんなで集まって暮らした方が楽しく快適なので、その手伝いをしたい、ということだ。
どんなところでも住めば都とは言うものの、現実問題として、
公共の交通手段や公共サービスが全国津々浦々、
どんなに小さな集落までも、均一に届く社会を作るというのは、
なかなかに困難であり費用もかさむことであることは事実だ。
それより何より、人はやはり、いろんな人と係わって生きていく方が楽しいんじゃないかと思うのだ。


ライン
私の目的を、大上段に振りかぶって話せば、「街づくり」と言える。

それは、国とか自治体とか、公共の仕事なのでは?
とお思いになるかもしれないが、意外な事実を一つ、ご紹介したい。

 

世界で一番人が行き来する場所をご存じだろうか。
それは、東京の新宿駅である。
一日の平均乗降者数は約346万人(ギネス世界記録認定)。
香川県の人口が99万人なので、そのおよそ3.5倍(!!)の人が、毎日新宿駅を通っている計算になる。
新宿駅は、公共の都市計画が成功して、世界一になったのではない。
極端に言えば、(日本の都市の多くと同様に)自然発生的な街である。
国鉄(現JR東日本)の路線に、自分たちの線路(私鉄)を乗り入れたら使うお客さんは便利だよね。
だからたくさん使ってもらえるよね。便利になるから、沿線の土地も価値が上がるよね。
というような感じの、ものすごく商業的な理由で
(国や地方自治体ではない)さまざまな私企業が鉄道網をつなげていって、
結果的に世界に類を見ない緻密なネットワークを創造し、
その便利さ故に、人が集まり成立した「街」である。

この事実は、同じ私企業(規模はまったく違うが)である、私に力をくれる。

個人が個人の判断と責任で、投資し、その集積として人が集まり、街が活性化する。
その世界最大の実例は、私たちの住む日本にあるのである。
私は、その目的のために「快適な空間」を提案する事が出来る。
それも、エネルギーコストをあまり使わない方法でだ・・・。
縁があって、高松という街に住んでいるのだから、まずは高松という街を快適な、
暮らしやすい街にしたい。地方都市には、地方都市なりの利点がある。
東京や大阪という大都市になれば、
鉄道を中心とした世界一緻密な交通網でしっかりと結ばれてはいるものの、
人口が巨大なため、人が多数集まる場所と暮らす場所は、ある程度離れてしまう。
一方香川のような地方都市は、そのような大がかりな交通網を持たなくても、
住まいと職場と生活に必要なモノやサービスを手に入れる場所、
つまり普段の生活をまるごと自転車圏内に包括することも夢ではない。

東北の地震がきっかけで、省エネルギーが再びクローズアップされているが、
現在の日本で行われている省エネは「我慢」が前提である。
夏のオフィスの設定温度を28℃にしましょう、

というのは、言葉通り室温が28℃であれば良いが、そういうわけではない。
では、室温設定28℃で快適な空間は出来ないのかと問われれば、それは現在の技術で可能なのである。

快適な環境には、しぜんと人が集う。

そのミニマムな姿が「住宅」であるが、
スケールを変えると、それが「街」であり、新宿は日本におけるその最大規模の例である。
快適な環境づくりから始める街づくり。

これが、私の仕事であり、この仕事に取り組んでいるのが私です。